俺の「好き」は、キミ限定。

 

「なぁ、ミオ?」


だけど、ミオの顔を覗き込むようにして尋ねると、ミオは何故か茹でダコのように顔を真っ赤に染めた。


「ミオ?」

「え……と、あの……次のレッスンは、その……」

「うん?」

「う……うう、これです……っ。でも、これはその、いくらなんでも、あの……」


口で言うのも恥ずかしそうだった。

だから、おずおずと差し出された本のページを捲って次のレッスン内容を確認したのだけれど、思わずカチンと固まった。

【手を繋いで、相手をドキドキさせちゃおう!】

大きく書かれた表題に続く例文には、【ふたりきりで花火デート中、突然手を繋がれてドキドキ!? グッと距離を近づけちゃお☆】なんて言葉が書かれている。


「や、やっぱり、今回のは無理だよね……。ユウリくんに無理強いしたくないし、全部を全部実行するなんて……」


俯いたまま、俺の手から本を受け取ったミオは、それを鞄の中に押し込めた。


「ご、ごめんね、なんか……。それじゃあ、私はここで──」

「……なんで? やろうよ」

「え……」

「手、繋ごう。俺はミオと、手、繋ぎたいって思ってたよ」


真っすぐに、ミオの顔を見て告げた。

するとタイミングよく電車が止まり、アナウンスとともに扉が開く。