「いつまでも、そういう脳天気なお人好しでいたら、本当にこのまま終わるぞ。何もしないうちにミオちゃんを取られて……そのときにはもう、"友達"だなんてバカなことすら言えなくなる」
断言されて、グッと口を引き結ぶ。
そんな俺を前にナルは目を伏せて、机の上で拳を握った。
その拳がほんの少し震えている気がするのは、多分、俺の気のせいではないだろう。
親友の苦しそうな表情に自分まで胸を潰された気持ちになって、今度こそ何も言えなくなった。
「……俺は、ユウリに俺と同じような思いをしてほしくなくて言ってるんだよ」
呟かれた言葉は僅かに震えていて、胸の奥がズキリと痛んだ。
……ナルは、優しい。
言葉は厳しいけれど、本当に俺のことを思って、敢えて厳しい言葉を掛けてくれているんだ。
それは過去、ナルも同じように傷ついた経験があるから──。
好きな人から"友達"だと言われて、失恋したことがあるからなんだ。
「……ありがとう、ナル」
ぽつりと呟くと、ハッとしたようにナルが顔を上げた。
そんなナルを見て小さく微笑むと、俺は改めて携帯電話を握り締め、息を吐いた。



