俺の「好き」は、キミ限定。



「ああいう恋愛指南書とか、恋愛小説とか少女漫画みたいな恋って憧れるじゃん……」

「はぁ〜……」


ポツリと溢すと旋毛にはもう何度目かもわからない溜め息が落ちてきて、顔を上げることもできなくなる。

──夢見がちな女だと言われたら、それまでだ。

そんな恋は現実に存在しないと言われたら、反論もできない。

だけど、本の中の主人公たちがする恋はいつだって素敵なものばかりだから、憧れずにはいられなかった。

みんな、キラキラと輝いている。

そんな"恋"を、私も一度でいいから経験してみたいんだ。


「……そもそもね、恋はしようと思ってするものじゃなくて、突然落ちるものなんだから」


頬杖をつき、呆れたように言うたっちゃんの言葉は、もう何度聞いたかわからない。


「じゃあ、恋に落ちる……って、どんな感じ?」

「ストーン! って感じよ。気が付いたら落ちてるの。もう引き返せないとこまでね」

「引き返せないところまで……」


ぽつりと呟いてから、消えいるように息を吐いた。

たっちゃんの言うことは、わかるようでわからない。

それは私が初恋も未経験の、超恋愛初心者だからなのだろう。