「……ふぅ。ほら……僕、こんな感じでしょ? 男のくせに昔から、メイクとか可愛い格好するのが好きで……。だから友達とか、あんまりできたことなかったんだよね」
ぽつり、ぽつりと話しだしたたっちゃんは、ネイルのされた自分の手を見て小さく笑う。
「同性からは、気持ち悪いってからかわれて。中学の時も、クラスで一人だけ浮いてる存在で……。高校入ってからも、当然のようにクラスで浮いてた。浮いてたっていうか……ハブられてたって言ったほうが正しいけど」
自分を取り囲む、無関心。
ズキリと胸が痛んだのは、そう言ったたっちゃん自身が笑っていたからだ。
そして同時に、たっちゃん自身がそれを受け入れているのだと思い知らされて、なんと声をかけるのが正解なのか、わからなくなった。
「でもまぁ、それなら別に、中学の時みたいに卒業まで一人でいればいいやって思ってたの。一人でいるのは慣れっこだったし、別に三年間くらい、どうにでもなると思ってた」
たっちゃんはきっと、諦めていたんだろう。
いや……未だに、他人に認めてもらうことを諦めているんだ。
『……なに、人のことジロジロ見て』
『ふんっ。……まぁ、見られるのには慣れてるから、別にいいけど』
たっちゃんと駅で会ったときに言われた言葉が、今更ながらに胸に刺さる。
……俺も、たっちゃんを好奇の目で見ていた。
自分の情けなさを思い知らされて、真っすぐに彼を見ることができなくなった。



