「まぁ、ねぇ。拾ってくれたのが男ってところがね。不幸の上塗りだったよね」
「だよねぇ〜〜」
たっちゃんの言うとおり、せめて拾ってくれたのが女の人なら良かったんだ。
恥ずかしいのは変わらないけど、それなら本を受け取って、「ありがとうございます、恥ずかしい奴でごめんなさい!」くらい言えたかもしれない。
「それでそれでっ。その、拾ってくれた人はどんな人だった? イケメンだった?」
「えー……」
嬉々とした表情で尋ねられ、思わず私は首をひねった。
言われてみると、顔は全く覚えていないのだ。
というより、見る余裕がなかったと言ったほうが正しいだろう。
直視したのはその人が持っていた私の本で……。
足元は、星のマークが特徴的な、ネイビーのスニーカーだったことだけは覚えている。



