──俺が、ミオのお姉さんに近づくためにミオに嘘をついてミオを騙すだって?
まさか、そんなことするはずがない。
そんなことをするメリットもないし、嘘をつく理由もない。
何より俺が……あの日、どんな思いでミオに声をかけたか。
どんな思いでミオを引き止めたか、たっちゃんは知らないだろう?
「俺は本当に、ミオのお姉さんのことは知らないし、お姉さんの名前だって、今……君から聞いて初めて知った」
たっちゃんを、"たっちゃん"と馴れ馴れしく呼ぶ気にすらなれなかった。
多分、たっちゃん自身も俺に、自分をそう呼んでほしいとは思っていないだろう。
「だから悪いけど、変な憶測で物を言うのはやめてほしい。恋愛指南書に頼っていて、情けないのは確かだけど……。俺は真剣に、ミオのことが好きなんだ。だからミオに、俺のことをもっと知ってほしいと思ってる」
そこまで言うと、空っぽになっているミオの席へと目を向けた。
……今はまだ、ミオは俺のことなんて、きっとなんとも思ってないだろう。
異性として意識すらしてくれていないだろうし、友達と呼ぶにも微妙な関係かもしれない。



