「……美織は、アンタは愛美さんのこと知らないみたいだったって言ってたけど。見ての通り、美織はバカみたいに純粋で人を信じやすいから、アンタの嘘にも簡単に騙される」
フンッと鼻を鳴らしたたっちゃんは、また挑発的な笑みを浮かべた。
「もし、アンタが美織に嘘をついてるって言うなら、今ならまだ見逃してあげるから、さっさと美織から離れなよ。それで、もう二度と美織に近づかないって、今ここで約束して」
キッパリと言い切ったたっちゃんは、机に置かれていた水の入ったグラスに手を伸ばした。
ゴクリと、たっちゃんの喉仏が動く。
再びコースターの上に戻されたグラスについた手のあとを見れば、それは間違いなく男の手の大きさだった。
「アンタみたいなイケメンなら、ミオじゃなくても、そのうちもっと可愛い子が現れるでしょ」
「──俺は、ミオに嘘なんてついてない」
「……は?」
「俺は好きな子に嘘なんてつかないし、これから先もつきたくない」
そんなたっちゃんを前に、俺は小さく息を吸うと背筋を伸ばした。
灰色の瞳を真っすぐに見つめ返す心は不思議と凪いでいて、迷い無く続く言葉に繋げてくれる。
「それに俺は、ミオ以外の女の子を可愛いとかも、思わないよ」
すると、初めてたっちゃんが面食らったような顔をして押し黙った。
かく言う俺は、言葉にした途端にふつふつと怒りが沸き出したのに気がついて、膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめた。



