俺の「好き」は、キミ限定。

 


「……ごめん、私、ちょっとお手洗いに行ってくるね」


そのとき、不意にそう言ったミオが席を立った。

突然のことに咄嗟に顔を上げたものの、まさか引き止めるわけにもいかないし、「うん」と答えるので精一杯だった。


「いってらっしゃーい」


反対にたっちゃんは、慣れた様子でヒラヒラと右手を振る。

そうしてミオの姿はあっという間に店の奥に消えて、見えなくなった。

──店内には、今流行りのJ-POPが流れている。

それがやけに耳について、たっちゃんとふたりきりになった俺は、落ち着かなくて……。


「……ふぅ。で? アンタ、美織のこと好きなの?」


……だけど、気まずい、なんて思う暇もなかった。

ミオの姿が完全に見えなくなった瞬間、向かいの席に座るたっちゃんが、予告なく口を開いたのだ。


「え……?」

「まぁ、好きだよね。好きじゃなきゃ、恋愛指南書の中身を実践しようなんて、そんなバカな提案するはずないもんね」


どっかりと背もたれに背を預けて長い足を組み、フッと挑発的な笑みを浮かべたたっちゃんは、ミオを見送った右手で自身の前髪をかき上げた。

その様子からは、今の今まで纏っていた陽気な空気は完全に消えていて……。