「……と、いうわけでね」
「──プッ、あははっ。マジうける! ヤバイわ、それ!」
そして案の定、今朝の出来事を話したら、笑われるどころか爆笑された。
【恋を叶える12のレッスン】という恥ずかしいタイトルの恋愛指南書を落として、見ず知らずの人に拾われた。
それを自分のものではないと言い張って、逃げるようにその場から走り去ったのだ。
たっちゃんが笑いたくなるのも無理はないとは思うけど、ちょっと笑いすぎじゃない?
仮にも親友だったら、落ち込んでる私を慰めてくれてもよくない?
「ぷっ……、アハハッ。あー、お腹痛い」
「人の不幸を楽しんで……」
「だって笑わずにはいられないでしょ。それで、どうして、ちゃんとその本を受け取らなかったの?」
尋ねられて一瞬言葉に詰まってしまった。
再び唇を尖らせ眉根を寄せると、鼻から小さく息を吐く。
「……だって、女子高生がそんなの読んでるって思われたと思ったらさ、恥ずかしくて……無理でしょ」
きっと、この女子高生、どんだけ恋に飢えてるんだ、と思われただろう。
恋を叶える12のレッスン、って。
アホか、って名前も知らない人に引かれたかもしれない。



