ふうっと小さく息を吐き
席に座る。


「美桜。」


するとさっき帰ったと思った
斗真が後ろに立っていた。


「どうしたの?」


「教科書。俺の使って。
必要ないから。」


私の返事も待たずに
ポンッと机の上に教科書を置いて
行ってしまった。


…うん、やっぱり優しい。


今まで付き合った時には
感じなかった何とも言えない感情が
私の中を満たした。
心が温まるような。

嬉しくて私はその教科書を
穴が開くほど見つめた。


「ちょっと!美桜!」


そこへ完全に忘れていた
莉子が戻ってきていた。


「さっきの!なに!?
いきなりチュー!?
本当に溺愛してるんだね…。
学校の王子様は美桜の物か~。
すごいね!!」