すると彼は
バッと口元を手で覆ったけど
指の間から見える頬は
うっすらと赤く染まっていた。

自意識過剰かもしれないけど
私の中に一つの仮説が浮かんだ。


「結城って私に一目ぼれ…」「斗真。」


続きは言わせないとばかりに
言葉をかぶせてきた。


「…はい?」


とぼけた返事をすると
彼は眉間に皺をよせた。


「だから、斗真って呼べよ。
付き合ってるんだから。
もし、次苗字で呼んだら
場所に関わらずキスするから
覚えといて。」


こう言った時には、彼、いや
斗真の頬の赤みは引いていた。


タイミングがいいのか悪いのか
ここでちょうど
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。