雨宿り〜大きな傘を君に〜


菱川先生に温かいものでも淹れようかな。

そう一歩を踏み出そうとした瞬間、


「ハナちゃんとは上手くやってるのか」


緒方さんが私の名前を出した。



「ええ」


「どこまでいったんだ」


「今はなにも」


「"今は"ってな、托人。相手は学生で、16だぞ?」


出ていくタイミングを失ってしまった。


「16歳は結婚できる年齢ですよ」


手元の資料とパソコンの画面を交互に見ながら、菱川先生は平然と答えた。


「おまえなぁ…」


「緒方さんの心配も分かりますけど、彼女が嫌がることはしません。そこは信用してくれても良くないですか?」


「……百歩譲って、彼女が托人に好意をもっていて、おまえもハナちゃんを好きなら、まぁ許そう。だけど、おまえはハナちゃんのこと、」


緒方さんは2本目のお酒を空けた。



「女として、見てないだろう」



静かな咎めるような声に、
何故か私の胸が痛んだ。