まだ何か崎島が言おうとしていたけれど、タイミングよく英語の講師が入ってきて中断になった。
黒板を見ていても背後から崎島に覗かれているような気がして落ち着かない。
まさか私が逃げ去った後にアパートの部屋まで確認しているなんて、ストーカーの域だ。
成績優秀で人望にも厚い彼はなぜ私なんかに興味を持つのだろう。得なことなんてひとつもないから、心底不思議だ。
そもそも崎島にストーカーをされてると助けを求めたとしても、何人が信じてくれるだろう。崎島はアンタなんか相手にしないでしょ、と嘲笑われそうで怖い。
少し前までのキラキラとした崎島を見ていた時は、私も同じ気持ちだった。たまたま同じ年齢で、たまたま同じ塾になったけれど住む世界の違う人だと思っていた。
生まれ変わったら崎島のようになりたいと、ちょっぴり憧れてもいた。
けれどあの熱い瞳を向けられてから、私の中の彼のイメージが覆された。
サッパリしていて元気な男の子が、執拗な人へと変わっていった。
やっぱり一度くらい誘いに乗っておくべきだったのかも。ううん、今からでも遅くない。
一緒にご飯を食べたら、きっと彼も満足するはずだ。
私が誘いを断り続けたせいで、崎島のプライドを傷付けてしまったのかもしれない。
よし、決めた。明日、ご飯を食べに行こう。
それで彼の気が済むのならば安いものだ。


