雨宿り〜大きな傘を君に〜


高校からの帰り道、いつもと同じように塾へ向かう。

初めて塾に行きたくないと思った。

はぁ。
もう溜息しかでない。

どんな顔をすればいいのかな。

崎島と顔を合わせることは非常に気まずいけれど、仕方ない。



塾の廊下を少し挙動不審になりながら歩く。





「あっ」


真っ直ぐ向かった教室の前で、菱川先生と擦れ違う。


わざとらしいくらいに頭を下げる。


これまでと同じように先生は会釈をすると、私には目もくれずに立ち去った。


見慣れた眼鏡と無造作ヘアに、違和感を覚えるなんておかしいな。


そして教室のドアを開けると、既に崎島が参考書に視線をおとしていた。


大丈夫。


どんな顔をすればいいか分からないし、今まで通り接することはできないと思う。


それでも塾には菱川先生が居てくれて。
帰りは駅で待ち合わせすることになっているから、

あの日感じた"怖い"という感情は、私の中から消え去っていた。