「俺は大丈夫だよ…ん?なに?」


いけないっ。
先生の顔を凝視していたようだ。

だって気になるよね、眼鏡。
でも聞いていいのかな?



「塾にいる時とは違う俺で驚いた?」



自覚してるんだ…。
先生の一人称がボクからオレに変わっていることにも、慣れない。



「家ではコンタクトですか?」


普通は反対だけどな。外ではコンタクト。家では眼鏡のパターンがほとんどだと思う。


眼鏡がない代わりに、先生の茶色に近い瞳が露わになった。


「伊達眼鏡なんだよね、コレ」


キッチンのカウンターに置いてあった眼鏡を右手で弄び、私の正面のソファーに腰を下ろした。


「伊達眼鏡?」


度の入ってない眼鏡ってことだよね?
オシャレってこと?


「まぁ、俺の話はまた別の機会に話すよ。ただプライベートでの俺のことはみんなに秘密ね?塾以外で生徒と会うと、差別になるとか不純交際だとか色々と面倒な時代だから」


「絶対に他言しません」


「助かるよ」


紅茶をいれてもらう。

準備室とは違う空気が2人の間に流れていた。