「おじさん!助けて!」
交番がすぐそこに見える商店街の中、細い路地で私は最後の助けを求めることにした。
緒方さん。
母の友人に、電話をかけた。
『どうした?今どこにいる?』
緒方さんがワンコールで出てくれたことに心から安堵し、それから何を話したのかは曖昧だ。
すぐ向かうからそこに居なさいという緒方さんの指示を守って細い路地に座り込み、崎島に見つからないことをただひたすらに願っていた。
雨に濡れた髪が顔に張り付き気持ち悪いけれど、振り払う気力も残っていなかった。
母の病気を知った時、母の余命を受け入れた時、
怖いと思ったことは何度もあった。
でももうこれからは失うものがない。だから怖いと感じることすらないと思っていたのに。
どうして不安に押しつぶされ、涙が止まらないのだろう。
私にはもう、何も、何ひとつ、ないのに。
なぜーー