もっと話していたかったけれど、先生は首を振った。明日のためにもう寝なさいと、部屋まで送ってもらった。
「おやすみ、ハナちゃん」
もうこれ以上優しくしないでと告げたはずなのに、その声は甘く響いた。
「有明沙莉さんの代わりに親切にされているのだと思っていて、ひどいことを言ってごめんなさい」
「最初から彼女のこと話さなかった俺も悪いから、お互い様だね」
お互いに言いたいことを言い、隠し事はなくなった。それじゃぁ、私たちはこれからどうなるのだろう。
「ゆっくり休みな。なにかあったら、いつでも起こしてね」
「はい。おやすみなさい」
静かに閉められた扉に、そっと投げかける。
菱川先生が私を好きになる確率は、0パーセントのままですか?頑張れば、僅かでも可能性はありますか?
16歳と25歳。
生徒と講師。
何も持っていない私と、立派な大人。
その差は大きくて、
私を好きになってもらう要素などなにひとつなくて、たまらなく嫌になった。


