日曜日。
予報通り天気は回復せず、レインブーツを履いて外に出た。
崎島とは気兼ねなく制服で出掛けたけれど、菱川先生とであればそうはいかない。
少しでも大人に見えたらと背伸びして、滅多に着ないブラウスを引っ張り出した。
久しぶりに先生がくれた腕時計も身に付けた。
浮かれすぎて失敗しないようにしないとね。
菱川先生のお目当のお店は電車を乗り継いで20分程の閑静な住宅街の片隅にあった。
おしゃれな看板にはランチタイムのメニューも掲示されていた。窓から見える店内は女性客が多く、確かに男性同士では入りにくそうだ。
「玉子料理の専門店なんだ」
「玉子サンド、美味しそう…」
落ち着いた雰囲気の店員さんに案内されて、4人掛けのテーブルに着く。予約をしていてくれたようで、順番待ちのお客さんがいる中でスムーズに注文できた。
「昨日はなに食べたの?」
"昨日"そこには崎島も含まれている。
「商店街で食べ歩きを…その、色々と…」
たくさん食べた。お腹いっぱいになるまで何種類も食べたはずなのに、今は具体的なものがなにも浮かばない。
「へぇ、いいなぁ。食べ歩きなんてもう随分してないよ」
菱川先生の答えに、"一緒に行きましょうよ"そう言えたらいいのに。
私は笑って彼の言葉を受け流した。
もう昨日の話題は止めて欲しい。


