「菱川、塾と雰囲気違くて驚いたわ」
「そうだね」
「まぁこれで誤解も解けて良かった」
「本当だね」
崎島の言葉が右から左耳へと流れていく。
少しもよくない。
それでも今すぐ崎島と別れて先生に弁解しに行く勇気が出ない。
またあの冷めた瞳で見られたら、しばらくは立ち直れそうにないよ。
なにより好きな人に冷たい顔をさせてしまった自分自身が許せない。
…逃げちゃダメだ。
「崎島、やっぱりまだ課題終わってないし帰ろうかな」
「え?」
「ごめんね。今日はありがとう!また月曜日に塾でね!」
引き止める声を無視して、菱川先生が進んだ道を辿る。まだ近くにいるかもしれないから、逃げていないで早く謝ろう。
ついでにこの間のことも謝って、いつも通りで在りたい。
そう決意して全力疾走してみたけれど、菱川先生の姿は見当たらなかった。


