制服姿の私たちが妙に子供染みているように思えた。
「無理矢理じゃねぇよ、ちゃんと大野の許可はとった」
「へぇ。詳しく話を聞こうか」
「なんでおまえに話さないといけないんだよ」
先生が醸し出す重い空気に押されることなく、崎島は食ってかかる。
こんなことになるのなら、きちんと菱川先生に話しておくべきだった。
「大野さん、どうなんだ」
いつも家で聞いている柔らかな口調ではなく威圧的なそれに怯みそうになる。
私を見下ろす菱川先生の瞳に優しさなんて欠片も感じられない。
「…無理矢理でなく、自分の意志で崎島と出掛けました」
「ほらな!」
崎島の勝ち誇ったような台詞に胸が痛む。
崎島のことを菱川先生に相談していたはずが、今日は崎島の味方になって先生を驚かせてしまっている。
ごめんなさい、菱川先生。
本当にごめんなさい。
今すぐ事情を説明したいのに崎島の手前、そうできない歯痒さを噛みしめる。
「嘘ではないな」
「はい」
目を見て答える。
しかし私たちを見下ろす菱川先生の目はひどく冷たかった。
塾講師としての無表情の彼よりも、何倍も冷たい視線に凍りつく。
「そうか。引き止めて悪かった」
「まったくだよ!今後、俺に偉そうに意見するなよ!」
舌を出して先生を追い払う崎島の後ろで、私は何も言えなかった。
立ち去る大好きな背中に、心の中で何度も謝ることしかできなかった。


