ゆっくりと坂を下り、比較的空いている場所で崎島は立ち止まった。


「記念に写真撮ろうぜ」


「いいけど…」


私の肩を引き寄せ、崎島の顔がぐっと近くなる。


「近いよ」


「普通だろ。ほら笑って」


目の前に掲げられた携帯のカメラを見る。

何回かシャッターの切る音がした。



崎島の体温を近くに感じ、早く離れて欲しいと思ってしまった。


菱川先生の時はずっとくっついて居たいと思ったのに。やっぱり私にとって先生は特別なんだね。


「大野、真顔じゃん」


「慣れてないの!」


平然と距離をとった崎島に撮れたての写真を見せられ、少しも楽しそうな顔をしていない自分が嫌になった。


「上手く笑えてなくてごめん」


一方の崎島は満面の笑みで、誰が見てもイケメンに写っている。まぁ元が良いからね。


「謝るなよ。慣れるって!次に出掛けた時にも撮ろうぜ」


「うん」


一緒にいて分かる。
崎島の隣りはひどく心地が良い。

気を遣わないで済むテンポの良い会話と、なにより彼の笑顔が居心地の良い空気を作り出していた。

ホント、崎島って凄いなぁ。