きっと崎島は騙されてなんてくれないから、正直に打ち明ける。


「親戚のお兄ちゃんがすごく優しくしてくれて。最近、好きだって気付いたの。でもまぁお兄ちゃんには彼女がいるみたいで…人生って上手くいかないよね」


「告白はしたの?」


「彼女がいるのに、告白なんてできないよ」


「そっか、辛いな」


眉をひそめて頷いてくれた。


「この想い、忘れられるかな?」


珈琲の空き缶を何度も捨てようと思ったのに。結局はいつもの定位置に戻してしまう頑なな心は、先生への気持ちをそう簡単に忘れさせてはくれないだろう。


「思い出は色あせるから、大丈夫だよ。哀しみはいつか消える」


崎島が言うと妙な説得力がある。
いつかは消えてしまうのか。それは少し寂しいだなんて、恋心は複雑だ。



「ありがとう。崎島に聞いてもらえるだけで、気持ちが軽くなるよ」


「話ならいくらでも聞くよ。なんでも話して」


悩みを打ち明けられる相手が居ることに、とても助けられている。

本当は菱川先生に全てを相談したかったけれど、まさか彼自身のことで悩むことになるなんて予想していなかった。
それは菱川先生も同じだろう。