いつしかわたしは彼を直人くんと呼ぶようになり、彼もまたわたしを美雨と呼び捨てで呼ぶようになった。 『美雨っていつも教室で本読んでるよね』 彼はふいに言った。 『うん。 他にとりたててすることもないし』 授業の予習は家でしているので、休み時間にすることなど特になかった。 『どんな本、読んでるの?』 彼は興味深そうにわたしの目を見ながら言った。