3話「古びた部屋でふたり」





 水音は、彼に抱えられたまま、気を失っていたようだった。
 次に気づいた時には、知らない部屋にいた。

 床に古びたクッションが並べられ、その上に寝かされていた。そして、体には、薄い毛布が掛けられていた。きっと彼が掛けてくれたのだろうと、水音はすぐにわかった。

 水音が部屋を見渡すと、古びて所々が痛んではいるが、しっかりとした家に見えた。
 水音が寝ている部屋と、小さなキッチンが見える。他にも、小さなドアが2つあるので風呂場とトイレだろうと予想される。

 体はまだ冷えていたけれど、ほんのりと温かい空気が感じられた。水音が寝ていた横に、大きな器が置いてあり、そこには手の平ぐらいの丸い石が置いてあり、その石から火が出ていた。
 その火が、水音を温めてくれていた。
 石が火を発するものは、元の世界にあるはずもなかったので、水音はそれを物珍しそうに眺めていた。するの、小さなドアの1つが開いて、家の主が顔を出した。


 「起きたのか。」
 「あ、はい。助けてくれ……………てっ!!何て格好なの!?」
 「あ?……下履いてるだろ。」
 

 水浴びでもしていたのだろうか。銀髪と褐色の肌は濡れていて、上半身は裸だった。
 タオルを頭に掛けながら、近寄ってきた。


 「まぁ、顔色はよくなってんな。こい。」
 「………ちゃんと上を着てくれたら行くわ。」
 「おまえな、誰が助けてやったと思ってんだよ。生意気言ってんじゃねーよ。」
 「……………。」


 お互いに睨み合い、折れたのは銀髪の男だった。


 「っち、生意気な女だ。」


 椅子に掛けてあった服を乱雑に着かんで、渋々と袖を通した。