そんな事を思い出しているうちに、どんどんにシュリが愛しくなっていき、思わず彼の胸に顔を埋めてしまう。目の前には、彼の偽りの黒の刻印。それに頬を当てる。すると、その感触がくすぐったかったのか、「ぅん……。」と、寝ていたシュリがゆっくりと目を覚ました。


 「水音……起きてたのか?」
 「ごめんなさい……起こしちゃった……。」
 「いや、いい。………おまえ、なんで泣いてんの?」
 

 シュリは、心配そうに水音の目を親指で擦って涙を拭き取ってくれる。
 自分が泣いていた事に今さら気づいた水音は、少しだけ恥ずかしそうに笑って答えた。


 「幸せすぎるからかな。嬉し泣きみたいに。」
 「……なんだそれ。」


 泣いたのは、きっとそれが全てではないとわかっている。けれども、昨晩は幸せすぎて泣けたのだ。こうやって朝起きて、大好きな人と一緒に寝て、起きてから一番始めにその人を見れるのは、とても幸せだったのだ。

 それを思い出しては、水音はまたうるうるとしてしまう。


 「シュリ?」
 「……おまえの事、好きすぎる。」
 「な、なんでそんな事……」


 突然すぎる愛の囁きに、水音は言葉を失ってしまう。
 そんな水音をシュリはギュッと抱き締めた。照れ顔を見られるのが恥ずかしいのか、シュリはそうなる前に水音を抱き締める事が多いと、気づいていた。

 裸のままで寝ていたので、肌と肌とか触れあう。
 昨晩は、あんなに裸で抱き合っていたのに、今の方がとても恥ずかしかった。けれども、トクントクンと彼の鼓動が少し早くなっているのがわかると、水音は少し恥ずかしさが落ち着いてきた。


 「雪香の娘を守りたいと思ってたし、彼女の娘だってことで運命を感じたのも確かでしたけれど……。湖で見て一目惚れしたし、一緒にいれば好きは増すし、昨日のお前は可愛すぎるし。どれだけ俺にを惚れさせるんだよ。」
 「シュリ………それは、恥ずかしすぎるよ。嬉しい、けど……。」
 「本当に事だ。」
 「もうっ!」


 水音は、シュリから離れて布団をかぶって隠れようとするが、シュリはそれを許してくれずに、顔をずらして近距離で水音を見つめた後に、キスを繰り返した。


 朝から、シュリは甘い時間を水音にくれる。

 今はそれを味わっていたくて、陽が昇るまではシュリを堪能しようと水音は目を閉じた。