「疲れているだろう?今は寝よう。今日はこのベット使っていいからな。」
 「ぁ、ぁー。」
 「どうした?」
 「んーわかんないな。トイレか?」


 水音は自分が思っていることを伝えられず、とても辛くなる。首を横に振ると、シュリは困った顔をしてしまう。
 ダメだ、自分の気持ちを我慢しようと思った時だった。


 「………寂しいのか?」


 そんなシュリの、言葉を聞くと水音はすぐに頷いてしまう。それの気持ちが1度の首の動きで伝わったのか、シュリは嬉しそうに笑った。
 

 「ごめん、おまえは辛くて怖いはずなのに、今の気持ち聞いて、嬉しくなった。」


 シュリは、頬を染めながらそんな風に言った。


 「怪我してから、変な男が家に来て助けられたんだ。なかなか助けに行けなくて悪かった。俺はシュリに会えなくて、ずっと寂しかった。……だから、なんだ。おまえが同じ気持ちでいてくれてるってわかって嬉しかった。」


 シュリの言葉は、不安でいっぱいだった水音の心を温かくしてくれた。彼の素直な言葉が嬉しくて、言葉や表情、動きでは伝えられないので、水音は視線だけはシュリを見つめて、少しでも自分の気持ちが彼に届くことを願った。


 「おまえに話したいこと、話さなきゃいけない事が沢山ある。いなくなってしまって、わかった。水音には教えなきゃいけない。聞いてほしいんだ。でも、まずはその体が戻ってからにしよう。これは、薬のせいなんだろ?噂で聞いたことがあるんだ。」


 水音が頷くと、シュリ「やっぱりな。」と、怒りを露にした。もちろん、その相手はレイトだろう。


 レイトは、自分が黒の刻印から、白蓮の刻印になる事を望んでいた。それを強く望んでいながら、何故水音に早く薬を飲ませなかったのだろうか。
 長い時間をかけて、水音を説得させるような方法をとったのか、水音は不思議だった。
 彼の優しさだったのか、それとも他に何かあったのか。水音が「特別な存在」と言った彼は、無色だからではない「それだけじゃないよ。」と言ったレイトの言葉が、頭から離れなかった。




 「俺もおまえが心配だし……おまえも寂しいなら、俺と一緒に寝るか?」


 照れた様子で、シュリがそう言うと自分の言いたかった事が伝わったので、水音は以心伝心ようで嬉しくなってしまう。笑えないのはつらいけれど、彼ならばきっと、自分が喜んでいるとわかっているだろうと水音は思った。