「………やめておきます。」
 「それがいい。で、おまえ本当に刻印ないのか?」
 「え………。」


 銀髪の男は、濡れて張り付いた水音の服を引っ張り、開いた胸元を覗き込んだ。
 突然の行動に、水音は固まってしまう。
 自分は今会ったばかりの男にキスをされ、そして、下着や普段他人には見せない肌を見られている。
 それを理解した瞬間。水音は一気に顔が赤くなり、そして気づくと叫び声のような大きな声を出していた。


 「なっ何やってるのーーー!!」
 「おま、バカかっ!!」
 「っっ………んー。」


 水音が大きな声を出してしまうと、男は焦って水音の口を手で覆った。
 男らしい大きな手は、とても温かく冷えた体がそこから熱を与えてくれていた。危険な男だとわかっているのに、何故か安心してしまうのは、自分が弱っているからなのだろう、と水音は考えるようにした。

 銀髪の男は、身を低くして辺りをキョロキョロと見て、何か警戒しているようだった。
 しばらくすると、ガチャガチャと重たい金属がぶつかる音が複数聞こえてきた。こちらに向かっているのか、数も音量も大きくなってきた。


 「今の女の叫び声は、こっちからだぞ!」
 「無色の刻印が来たのかもしれない。探せ!」

 
 そんな声が夜の森から聞こえてきた。


 「ちっ………やっぱりまだここら辺に居やがったか。めんどくさいな………。」
 「なに……何が来てるの?」
 「お偉いさん方だよ。おまえを見つけて監禁するつもりなんだろ。」
 「監禁っ!?」
 

 コソコソと小声で話す彼に合わせてしゃべっていたが、物騒な言葉を聞き思わず、声を荒げてしまう。すると、また男が乱暴に水音の口を塞いだ。