15話「信じると決めた」





 「なんで、レイトさんに黒の刻印が……。」

 水音は、レイトの脇腹にある刻印に釘付けになった。
 レイトは、白蓮の刻印の持ち主で、白騎士隊長であり、白蓮の人々からの信頼も厚い人物のはず、だった。しかし、目の前の彼は黒の刻印がある。
 どうして、彼が……黒の刻印を持っているのだろうか。


 「あぁ……見られてしまったね。いつかはバレる事だから、君に見せるつもりではあったけど、少し早まってしまったな。」
 「レイトさん、黒の刻印の持ち主だったんですか?」
 「そうだよ。」


 レイトはあっさりとその事実を認めた。


 「どうして……どうして、白蓮の刻印だって嘘をついて……そして、どうやって……。」


 水音は、驚きで言葉が上手く出てこなかった。しかし、レイトはそれを理解しているのか、水音の頭をゆっくりと撫でた。

 
 「大丈夫だよ、水音。驚くのも仕方がない。こんな醜い刻印が僕の体にあるのだから。でも、それももうおしまいだよ。……僕の刻印を受け取ってくれないかな。」
 「………どういう事?」


 水音は、レイトが話している事の意味がわからなかった。
 刻印の交換は、マカライト国の人々の刻印の交換だと聞いていた。でも、それは本当はそうではないのだろうか?


 「無色はね、愛し合うことでその相手の刻印を貰うように、その人の刻印と同じ物になるんだ。あぁ、でも安心して。僕が白蓮と黒の交換を願うから、君も一緒に白蓮になれるからね。」
 「………それ本当なの?」
 「君もこれで本当のマカライト国の人になれるんだ。」


 レイトはうっとりとした目で、水音を見つめて、そのまま額に小さく口づけを落とした。愛しい者を愛でるように。