「僕は怪我をしていないから、大丈夫だよ。……心配してくれるなんて、嬉しいよ。」


 レイトは、血が付いたままの手で水音の頬を優しく撫でた。ゆるりとした液体の感触が伝わってきて、水音は一瞬で恐怖を感じてしまい体が震えた。



 「……じゃあ、この血は………。」
 「白騎士の仕事が終わって、甲冑を脱いだ瞬間に、忍び込んでいた黒に襲われたんだ。全く、彼らは怖いよね。僕を殺そうとするんだ……。」
 「………じゃあ、レイトさん、あなたは黒を……。」
 「大丈夫。みんな始末しておいたから。僕は、こう見えても白騎士や白蓮の中でも、1、2位を争うぐらいに強いんだよ。」


 いつものように、レイトはにっこりと笑った。
 淡い光を浴びて、闇の中、血をまとって笑うレイトは、異様としか思えなかった。


 「……人を殺してしまったの?そんなに簡単に……?」


 水音は、レイトから逃げるように無意識に体が一歩ずつ下がってしまう。あまりの衝撃に、水音はよろけそうになってしまう。


 「どうして逃げるのかな?僕は殺されそうになったから、殺しただけだよ。何が悪い?」


 水音の腕を掴んで、顔にこびりついた笑顔のままシュリは言い聞かせるように水音に言う。
 けれども、水音は猟奇的な彼の姿を間近で見て、そして肌や臭いで感じとって、すっかり恐怖心に囚われてしまっていた。
 レイトという男が怖くて仕方がなくなっていた。


 「イヤっ!離して……。」
 「……僕もそろそろ待ってられなくなったから、仕方がないかな。」


 そういうと、レイトは無理矢理水音を抱き抱えて、そのままベットへと押し倒した。
 水音の服や肌には、レイトが浴びた返り血がべったりとついていた。けれど、そんな事を気にしている余裕は水音にはなかった。