そして、レイトは白騎士の仕事があると屋敷を出ていってしまった。



 「それでは………無色の君。」
 「鳳水音です。マナさん。」
 「水音様、どうぞこちらへ、お部屋へご案内します。」


 水音は、マナの後に着いて屋敷の中を歩いた。途中、食事をするところやお風呂場などを教えてもらったけれども、大きな家にはメイド以外に全く人気はなかった。


 「あの……このおうちには誰もいないのですか?」
 「はい。こちらはレイト様だけのお屋敷になります。レイト様のご家族は、皆白蓮の刻印ではなかったようで、別々に暮らしております。」
 「そうなんですね。」


 この大きな屋敷に独りで暮らすのはどんなに寂しい事なのだろうか。
 元の家の水音の部屋はとても狭かったけれど、それでも独りになるのが寂しい事が多かった。
 レイトは、どんな気持ちでここで過ごしているのか。
 レイトが白騎士を自らやっている理由が、少しだけわかった気がした。


 「それで、水音様はレイト様、どう思いますか?」
 「……どう思うとは?」
 「恋人にいかがですか?とてもいい方ですよ!!」
 「あの………どうして自分の主人をすすめるのですか?それに、レイト様はきっと他の女性が放っておかないと思いますけど………。」


 レイト様が町や白蓮の領地を歩いている時の、女性達は、憧れの王子様を見ているようだった。
 きっと、白蓮のお嬢様達にも人気があるのだろう。


 「実は、今までレイト様は女性をお屋敷に連れてきた事もありませんでしたし、それに恋人がいるとも聞いたことがないのです。」
 「えっ………そうなのですか。」
 「そうなのです。水音様は、無色の君なので、特別な方です。こちらに連れてきたのも事情があってなのでしょうが。レイト様と仲良くしてあげてください。」


 マナは、母親のようにレイトを心配しているようだった。年はそんなに離れていないけれど、きっとずっとここでレイトを見てきたのだろう。

 水音は、マナに「わかりました。」と微笑み掛けて返事をすると、彼女は嬉しそうに笑ってくれたのだった。