10話「孤独の主人」



 レイトに助けてもらった水音は、更にレイトの白馬に同乗していた。
 レイトには、「白蓮が無色の君を歓迎する。」と言ってくれた。断りたい気持ちがあったが、今は彼について行った方がいいと思ったのだ。

 無色である水音を見つけたことで、探していた銀髪の男のシュリに目がいかなくなっているようだったからだ。
 今、水音がシュリの元に戻ってしまったら、きっと白騎士がすぐに彼を見つけてしまうと思ったのだ。
 先ほど会った、派手な男、エニシに頼んではいたので、今は彼を信じるしかなかった。


 今でも思い出すのは、血を流して苦しむシュリの顔だった。彼は無事なのだろうか?
 彼の事だから、きっと大丈夫だろう。
 そう、信じなければ、水音は今すぐにこの場から逃げ出したくて、仕方がなった。




 「君の名前を聞いていなかった。教えてくれないか?」
 

 白馬の上では、水音が前に乗り、後ろから抱き締められるようにレイトに支えてもらいながら、乗馬していた。馬に乗るのは初めてだったけれど、怖がらずに乗れたのは、彼がいたからだろう。

 背中と腕に彼の甲冑が当たる。それは、とても冷たかった。


 「鳳水音です。」
 「……鳳……。」
 「レイトさん、どうかしましたか?鳳という名字に何かありましたか?」
 

 後ろを振り向きながら話をしていると、水音が名乗った後に、レイトは驚いた表情を見せていたのだ。
 以前、シュリに名前を言ったとき同じような反応をされていたので、水音はとても気になってしまった。


 「いや……何かひっかかった気がしたんだけど。何も思い出せないんだ。すまないね。」
 「いえ。」


 レイトは申し訳なさそうにそう言うと、すぐにまっすぐに前を向いて、縄を引いた。