「……み、水音……。なんでここにいる?」
 「雪が、連れ戻してくれたの。詳しい話は後にしましょう。鎖をはずさないと。」


 シュリは大分弱っており、朦朧とした顔で水音を見ていた。そんな彼を見るのが辛くて、水音は気丈に振る舞った。そうでもしていないと、怒りと悲しみで、とんでもないことをしてしまいそうだった。


 『シュリ……可愛そうに。レイトやエニシも随分と酷い事をする。傷だけでも治してあげましょう。』


 水音の後ろからゆっくり歩いてきた雪は、そう言うと、シュリの傷口がゆっくりと閉じていく。
 それを驚いた表情で、シュリは見つめた後に雪を見た。


 「おまえ、誰だ?」
 「……あの人は雪だよ。」
 「あいつか、雪?」
 『そうです。ですが、詳しい話をしている余裕はないようですね。傷も完璧には治せませんでしたが、仕方がないですね。……彼が来てしまいました。』


 雪の言葉の後、ゆっくりと地下に向かって歩いてくる足音が聞こえた。


 『エニシが来ます。二人は、先に湖へと送ります。しっかりとやらなければ行けないことをやってきてください。』
 

 雪がそう終わる時、シュリと水音は宙に浮いていた。先程と同じ浮遊感を感じ水音は驚いたが、今は隣にシュリがいる。シュリの腕をしっかりと握りしめる。
 シュリはまだ全てを理解できていないようだったが、それでもやるべき事と聞いて、表情がすぐに引き締まったものになっていた。


 『あとは、任せましたよ。お二人共。』


 そう言って、消えてしまう瞬間に見た雪の表情は、神様とは思えない、とても晴れ晴れとした笑みだった。