ドクン。
「っ…」
至近距離で、じっと目を見られる。
ドキン…ドキン…
寝起きなのに、やっぱり流星さんの顔は綺麗で、至近距離で見つめられるとドキドキしてしまう。
「俺が七海と一緒に、飯食べに行きたかったんだよ。それぐらいわかれよ」
むに。
「!?」
顎を持っていた流星の大きな手が、頬をむにっとつねった。
なっ…
つねられた頬を、両手で触る。
ドキン…ドキン。
びっ…びっくりしたー…
「七海、今日バイトは?」
流星は何事もなかったかのように立ち上がり、緩んでいたネクタイを結び直す。
「え!?あ、休み…」
まだドキドキしている私とは違い、流星さんはシワになったスーツを整えてる。
「そうか。俺、今日は出勤早いからもう行くけど、戸締まり気を付けろよ」
「あ、はい」
座ったまま、流星を見上げる。
「明日も今日と同じ時間に帰って来るから、起きて待ってろよ」
「はい…」
って…え!!?
明日の朝も来るの!!?
「もし買い物行くなら、明るいうちに行けよ」
驚いて目を見開いている私に気付いているのか、気付いていないのか、流星さんは玄関に向かって歩き出した。
ガチャー
「じゃあな。また、明日」
玄関のドアを開けると、ふっと笑いながら流星は出て行ってしまった。



