「ただいま~今そこでなっちゃんに会っ…羽流!!?どうしたの!?羽流!!しっかり!!」

「お母さん…おかえり…」


しゃがみこんだまま玄関で吐いてしまった私を見て母は持っていた荷物を落とした事にも気づかずに私に近づくと、持っていたハンカチで私の口の周りを拭きながら「部屋行こう」とゆっくり私を立ち上がらせて部屋へと連れて行ってくれた。


「汚してごめんね…」

「あんなの拭いたら済むことなんだから気にしなくていいの。それより何かあったの?」

「大丈夫…ちょっと思い出しただけ…」


母は「そう…」と言いながら私のおでこに触れると、ふわっと柔らかい笑みを向けて部屋を出て行った。

母も父も私がこんな風になった初日以降は一切その理由について触れることも話すこともしないまま見守ってくれていて、それがとてもありがたかった。