全て今年に置き去りにして新たな年を迎えられたらどんなに楽だろう。
「しょうがないでしょ~だってお母さんの一番はお父さんだも~ん」
「母さ~ん」
「お父さ~ん」
「ああもうはいはい。ごちそうさま」
「あらまだおそば残ってるわよ」
「そっちの意味じゃないよ!」
「なんだ羽流~嫉妬か!くぅ~可愛い奴だな」
「違うからああ」
「いや~父さん照れるな~ははは」
どんなに置いて行こうとしたって、どんなに忘れてみたって、どんなに全てを何かに綴って深くに沈めたって、何かの拍子に思い出す。
記憶は時にそういう嫌がらせをしてくるものだ。
除夜の鐘がテレビの向こうで鳴り始めたのを観ながら私は奈津にメッセージを打ち、迫るカウントダウンを家族で音楽番組を観ながら待機していた。
そして、年明けを男性シンガーソングライターの透き通るような歌声を聞きながら迎えた。
「あけましておめでとうございます」
「こちらこそ。今年もよろしくお願いいたします」
そんな挨拶を頭を下げ合って花瀬先輩としたのは年が明けて3日目の昼すぎだった。
