「長い話になってごめんね…」


そう言いながら高志さんは私の濡れた頬にそっと触れると「俺泣かしてばっかだな」と苦笑い。

その言葉に私は涙を止めなくちゃと思うのにすぐには止められなかった。

コウの歌があんなにも自分に向けられたように感じたのは、あんなに現実味があって惹き付けられたのは、高志さんの春音さんへの想いから生まれたかけがえのない愛情がそこに沢山沢山詰め込まれていたから。

そしてそれと同時に春音さんを失って生まれてしまった憎しみや恨みがあのコウの世界に沢山沢山広がってしまったからだと私は勝手にそんな解釈をしながら高志さんを見た。


「た、高志さ……」

話しの中で高志さんは何度も自分がしていることが間違っているんじゃないか。とか、自分は春音と同じ想いの人を救えるだろうか?と言っては目を伏せていた。


「私は、高志さんの……コウの音楽に沢山救われました…嘘じゃありません。もう無理だって何度も夜を迎える度に……あなたの……コウの歌声に沢山沢山泣いて生きる力を貰いました。だから、だからあああ…っ…」

「うん、うん。ありがとう……羽流ちゃん……」


だから、そんな辛そうな顔しないで。と泣きながら私は高志さんの手の温もりに声を詰まらせた。