光希も秋臣も柊斗も榎絃も、誰一人として俺を責める奴はいなくて、その「お前は悪くない」を聞く度に、肩や背中を叩かれる度に、泥々とした真っ暗な感情が俺を責めるように蝕んでいった。
春音の叫びが綴られたノートを読めるようになったのは、今年に入ってからだった。
22歳になった俺は、春音の自宅を訪ね、春音のお母さんに頼んでノートを借り、びっしり書かれたノートを、彼女の死を選択するまでの全てを一文字も見逃さないように隅々まで読んだ。
そして、最後のページに書かれた春音の言葉は、それまでの文字にはないほど綺麗な字で、そこに光はなかった。
ーもういいや。高志くんには会えなくなるけど、私はもう疲れた。こんなに怖いのはもう嫌。私は生きていたくない。もうあいつらから全てから解放されたい。高志くんごめん。ごめんなさい。こんな自分勝手な私でごめんなさい。夢が叶う時に私はいないけど、私の名前を高志くんが使い続けてくれる限りずっと一緒だね。私を好きになってくれてありがとう。こんな弱い私でごめんね。強くなれなくてごめんね。頑張れなくてごめんなさいー
誰かに言いたかったはずなのに誰にも言えずにこのノートだけが春音が吐ける場所だったなんて…
こんな小さい世界で彼女は必死に書くことで息をしていたなんて…
ーサヨナラ、ありがとうー
その言葉に俺は、何度もノートを掴んだまま彼女の名前を呼び続けながら泣いた。
