この時、すっかり浮かれていた俺たちは、受験勉強をしながらデビュー後の事を電話や集まってよく話していた。
もちろんそこにはいつも春音も一緒にいた。
春音が笑えばキリキリしたメンバーの雰囲気も和むぐらい春音は俺たちにとってもメンバーの一員で、癒し担当みたいになっていた。
メンバーの恋愛話しになるといつも春音の意見を聞き、上手くいっても玉砕しても春音に報告。そんな日々が確かにあった。
「もうすぐ付き合って1年だな」
『うん。1年だね。早いね~』
「受験終わって落ち着いたらデートしような」
『うん、楽しみ』
電話でそんなやりとりを笑いながら話した3日後の12月11日、春音は誰にも何も言わないまま学校の屋上で自ら手首を切って命を絶った。
その話を春音と電話で話した2日後に風邪をひいた俺は学校を休んでいたためにメンバーから電話で聞かされた。
理解した。理解はちゃんとしていたはずなのに、一緒に同じ大学に行こうね。頑張ろうね。と笑う春音の声ばかりが再生され、自分の精神がグラグラとぐらつき、ギリギリ大学に合格して春を迎えた頃には
もっと積み上げようとして崩れ落ちた積み木のように、並べてきたドミノがたった小さなミスで倒れていくように、俺の心は崩壊した。
そしてその日から引きこもりがちになっていった。
