家に帰ればシンとした真っ暗な世界が待っていた。
放りこんだ制服を洗う洗濯機のうるさい音。
体に、髪についた湖の臭いが取れない。消えない。なくならない。
"いけいけし~ら~か~み~あははは"
叫んでも叫んでもシャワーの音が掻き消していく自分の叫びに溢れる涙を止められずにいた。
"ごめんな"と"大丈夫?"の声に、大丈夫じゃないよ。見てわかるでしょ!!と心の中で叫んでも叫んでもシャワーの音が掻き消していく。
誰にも言えない。
こんな苦しいのはもう嫌だ。
楽になりたい。なんて思うばかりでなんにも怖くて出来ない弱い自分がどんどんお湯と共に流れていくのを、ただ震えて泣くことで気づかないフリをしていた。
「羽流ちゃん……」
「真城さんは……何も悪くなんかないです…」
そう。真城さんは悪くなんかないのに、わかってるのにどうしてこんなにも目を合わせるのに抵抗してしまっているんだろう……
「ありがとう……」
その声に、私はふわりと軽く、そう、とても軽く顔を上げてしっかりと真城さんと目を合わせた。
そして、静かに泣いた。
