明日キミに聴かせたい


部屋の前で立ち止まる私に「大丈夫?」と光希さんが訊ねながらドアノブを回した。

何があるのか、光希さんがなぜ私を呼んだのか直前になって考えてももう頭の中はよくわからないモヤモヤでいっぱいになっていた。


それはまるで何を見ているのか、滅茶苦茶になった夢の中にいるようで、このドアの向こうに現実が待っている、答えが待っていると思うと、よくわからない緊張感が私の胸をばくばくさせた。


「はい、大丈夫です…」


私の返答と共に光希さんはゆっくりとドアを開けた。

そして私が少しうつ向きがちにゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた時、誰かが立ち上がる音がして顔を上げるのが怖くなった。


「羽流ちゃん、顔上げて…」


後ろでドアを閉めた音がしたのと同時に光希さんがそう言いながら優しく私の肩に触れた。


ゆっくりと少しの隠し切れない怖さを必死に隠そうとしながら顔を上げた時、私の目に映った目の前の表情に勢いよく記憶の中を何かが駆け巡って引っ張り出された一部の記憶に私の目は瞬きを忘れていた。