「しっかしなんで羽流のID知って……」

「橘孝太郎じゃないの?」


私の言葉に奈津は「まさか…」と言いながらもみるみるうちに申し訳ないといった表情になり、終いにはベッドに正座をして「すまん!」と土下座ポーズをした。


「はぁ~つ・ま・り、奈津が橘孝太郎に私のを消去してもらう前に橘孝太郎がこの花瀬名雄に私のIDを教えていたと?」

「そうなりますね。けどなんで先輩そんな事したんだろう?なんのメリットがあるわけ?」

「私のIDをお金と交換したとか?」

「えええ!いやいやそれは無いっしょ?羽流のなんて高くて500円ぐらいでしょ?」

「ちょ、それ安すぎやしないかい奈津さん!!私の個人情報だよ!!500円は無いわーショックだわー」

「コミック買ってそのおつりでジュース買えるじゃん!」

「買えるっけ?」

「あ、ちょっと厳しいか~あはははは」


そんな会話をしている時、新しいメッセージがポンッと送られてきたので二人で一瞬驚きながら見てみると……


-なぁ、どんな音楽が好き?


「音楽?」

「音楽って羽流あれしか聴かないじゃんね。なんつったっけ?ユウだっけ?」

「コウね、コウ」

「そう!コウコウ。どうするの?返すの?」


悩んでいると母が部屋をノックしてドアを開けるなり「なっちゃん晩ご飯食べていくでしょ?」とにこやかに奈津に話しかけた。