「あのね羽流、その、その、今日放送された音声の一部……なんだけど…」

奈津はとりあえず途中から校内放送で流れた音声を録音していたのだと言って私にスマホを見せた。

また思い出してしまうことはわかっていたし、そうじゃなくても青木さんの顔を見たせいか頭がズキズキして気持ちが悪くなっていた。

「……聞く」

「わかった…無理しないでね」


そして再生してくれた瞬間に黄本さんの声が耳に入ってきた。

聞こえてくる3人のカン高い声にみるみる涙腺がやられていくのがわかった。

感情が溢れ出す一歩手前で私の手は小刻みに震え、それに気づいた奈津はすぐに音声を停止して私の肩に触れた。


「羽流…」

「間違いない…よ…あの日の…あの…」

「うん、わかった。もう大丈夫だよ」


あの日の湖の臭いが鼻から入り込んでくる。
あの日の手が、必死にもがいた身体が冷たさを覚えてる。
あの日の笑い声が耳から入り込んでくる。
あの日の私が瞼の裏にこびりついてる。

苦しい。おかしいな。息が苦しい。
ここは大丈夫なはずなのに。おかしいな。

苦しい。