【夢愛side】

見つめていた彼がスマホから目を離し
こっちに気がついた。

揺れる電車内を少しずつ歩んでくる。

私は必死にスマホの画面を見ては
体の方向を違う方に変え
制カバンをあさって
定期券を見て、、、
という動作を何度かした。

「大輝?おはよ!」
「おー!おはよう!龍宇!」

え、、、、?
意味がわからなかった。

「大輝くんのお友達、、、なの?」

咄嗟に質問してしまった。

「そそ!学校の合格者説明会で会ったんだよ」
「名前順だと近いしな!
 俺、日高 龍宇(リュウ)ての。
 2人は?どっちも大輝の彼女?笑」
「んなわけじゃん!俺の彼女はこっち!」
「初めまして!白川美帝です!」
「美帝の友達の篠田夢愛です。初めまして」
「よろしく!美帝ちゃん、夢愛ちゃん」

あれ、なんか得した?

これで、友達?

友達ってどーやってなるんだっけ?

一気に頭が真っ白になった。

でも込み上げる感情が
今はピンクの花柄な気がして
顔がにやけてないか心配になって
笑うときは顔を覆うように
必ず口に手を当てて笑った。

龍宇くんと4人で話してると
時間は一気に過ぎていった。
あっという間に学校の最寄駅に着いた。

大輝くんと龍宇くんの学校は
私と美帝の学校の1つ先の駅になる。

「じゃあ、またね!」
「おー、じゃあな!」

軽く頭を下げて電車を降りた。

歩いて5分もしないうちに
学校に着いた。

「あーあー、入学式2時間もあるとか
 超最悪じゃん。寝ちゃいそう。」
「昨日あんだけ早く寝ようって言ったのに
 美帝が寝なかったんじゃん!」
「ほぼオール笑
 くーっそしんどぉ」

校門の前に2人で突っ立って
くだらない話をしてると
美帝が誰かにぶつかられた。

「痛っ!ちょっと!なにすんの!?
 スマホは校内禁止なんだよ?!」
「あ、ごめん。
 こんなとこで人が突っ立ってるなんて
 思いもしなかったから。」

髪、黒髪。
まあ、うちはこの辺じゃ有名な進学校。
美帝みたいな(ギャル)の方が珍しい。
まあ、校則とかもそんなに厳しいわけじゃない。
先生たちも見逃すように『おはよう』と
挨拶をしている。

「こっちも悪いかもしんないけど
 あんたもあんたなんだかんね!?」
「謝ってんじゃん。
 そろそろ、教室、行くから。じゃ」

まだ言い合いは続いていた。

「ちょーーーっと!あんた何年何組何番?!
 名前は?なんてゆーの!」

いやいや、年上だったらどーすんの、美帝。

「1年。組番号はまだわかんない。
 菊原。気が済んだならもう行くけど?」
「あーっそ!絶対忘れないんだからね!」
「知るかよ。」

少し見上げるくらいの背の高さ。
長くてフサフサの睫毛。
ノーセットの黒髪。少し着崩した制服。
ブレザーの下に青いパーカー。
イヤホンが少し出てる制カバン。

全然かっこいいわけじゃないのに
惹かれる何かがあった。