「軽い打撲です。すぐ治るので安心して下さいね」


病院で見てもらった結果、大したことはなかったようだ。


早く診察が終わり、先生の肩に掴まりながら待合室に移動して座る。


「体育祭の時に引き続き、怪我しすぎだろ」


隣に座る先生には、呆れたようにため息をつかれる。


「はい、気をつけます」


こればかりは私の不注意でこうなった。


だから逆らうことはできない。


ブー…ブー…ブー


「電話鳴ってるぞ」


先生にそう言われ、自分の携帯が小刻みに震えていることに気がついた。


「…今どこ?ずっと探してんだけど、」


電話の主は凌太からだった。


耳越しに、息を切らして喋る声が聞こえてくる。


どうやら、財布を探しに行って戻ると私の姿がなかったために焦って電話をかけたらしい。


一人で変な場所に落ちて怪我をして、何も告げずいなくなったから心配するのは当たり前か。


「…ごめん凌太、ちょっと気分悪くて先帰ってる。明日は学校行くから心配しないで」


私は先生の前で嘘をついて電話を切った。


「なんで正直に言わなかったの?」


切った後、先生は当然のように疑問をぶつけてきた。


「なんか…先生と一緒に病院にいること知られたくなくて」



「なんだよそれ」



先生はいつもの馬鹿にするような口調でそう言う。


「先生は何かあったらすぐ来てくれるヒーローみたいですね」


「大袈裟。俺、一応教師だし」


先生はそう返すが、本当はすごく優しくて、生徒想いなんだって改めて感じる。


普段は最低なのに


不意に優しい時がある。


でも新たな一面を見たような気がして、私は少し嬉しくなった。