「蒼!どうだった?」


職員室に戻るや否や、笑顔の歩が近づいてきた。


「まぁ元気な子が多いし賑やかで安心したよ、あとは大きな問題が起こらないように気をつけないと。歩のクラスはどうなの?」


俺が逆に質問を返すと、歩は少し険しい顔になった。


「俺のクラスもいい子達が多いんだけどさ、1人気になる奴がいて」


歩はそう言いながら生徒名簿を見せてきた。


今日は入学式で欠席する生徒は少ないはずだが、その名簿には1人連絡なしの欠席印がついていた。


「…前村凌太?」


俺がそう言うと、歩はゆっくり縦に頷く。


「中学の時も学校を休みがちで卒業もやっとって感じだったらしいんだ。初っぱなから無断欠席、家に連絡しても誰もでないし、学校来るかなって心配してて」


「そういうことか…」


少し問題を抱えてる生徒はクラスには決まって1人いるものなのか。


「お前のクラスにはいないの?心配な子とかさ」


歩にそう言われるが、大して思いつく生徒もいない。


「いや、今のところいない感じだった」


何の情報も入ってきてないし、本当に問題なしのクラス…だと思う。


「…恵まれてるな、お前」


歩は俺の肩に軽く手を置いて去って行った。


頑張らないといけないな、担任としての責任はしっかり持たないと。


俺はそう心に刻み、もうすぐ行われる入学式の会場である体育館へ向かった。