秘密。

「そろそろ終電やばいし、お会計しよっか?」
紗枝の一言で帰り支度を始めた。
店員を呼び、会計を済ませる。

財布を鞄にしまったところで、携帯が鳴っていることに気付いた。大志だ。

でも今は、美鈴がいる。紗枝もいる。
きっと週末で、明日仕事が休みだからまた飲もうって誘いだ。行きたい。大志に会いたい。
だけど大志は、美鈴の好きな人…。

「つむちゃん携帯鳴ってる?出ないの?」
「あ、うん。バイト先の人からやったからちょっと出てくるね」

席を離れて電話に出ると「紬?なにしてる?」と大志の優しい声が聞こえた。

「紗枝ちゃんと美鈴ちゃんと飲んでて、もうすぐ解散するところやよ」
「お、そかそか。なら、俺と飲み直さね?」
大志は、美鈴の好きな人…でも、わたしの好きな人。
「いいね、行きたい」
「よっしゃ、じゃあ今からそっち行くから、解散したら教えて」
お店の場所を伝えて電話を切った。
さっきは美鈴のこと応援するなんて言ったのに、わたしは最低だ。でも、わたしだって好き。

後ろめたい気持ちがバレないように、席に戻ってまた少しなんでもない話をして、20分程経ってから店を出た。
大志からは、あと5分程で着くと連絡があった。
「あ、わたし友達が近くにいてここまで迎えに来てくれるみたいやでここで大丈夫やよ。今日はありがと!楽しかった」
「あらほんと?じゃあここでね!気を付けて帰ってね」
紗枝と美鈴と笑って解散し、2人の姿が見えなくなったのを確認してから大志に連絡をした。