「併せて、もう一つ――お願いがあるのです」

 イシヅキの話を聞いて、重い表情のままになってしまった清空に対し、イシヅキが遠慮がちに切り出した。
 清空にしてみれば「殺してほしい」というイシヅキの頼みを受け入れたわけではないし、イシヅキもその事を清空の様子から見て悟っている。
 最初の頼みを聞くかどうかはともかく――といったところである。

「妹を、クスノキを捜すのを手伝っていただきたいのです」

 ここで、イシヅキの表情が再び翳りを見せた。
 今度は、メジロの事を話す時とは少し様子が違い、イシヅキの顔に浮かぶのは明らかに寂しげといったものである。

「弟が――メジロが暴走を始めた原因ともなった事ですが、我が妹、クスノキの行方が知れぬのです。幸いにも……クスノキには鋭い刃は在りません。しかし、何処にいるか分からないというのはメジロだけでなく――私も心配なところ、宜しければ歳平様に妹の行方を捜すのを手伝っていただきたいのですが――」

 と、イシヅキが言葉を切った。
 そこまで話して、自分の話に多少の無理があると悟ったのだろう。

「ふむ……協力してやりたいところではあるが――」

 清空も、そこまで返事をしたところで言葉に詰まった。
 いかに清空が妖の世界に理解があるとはいえ、清空は密偵でも同心でも無い。
 妖を捜し出すことはおろか、人捜しを頼まれたとしても難しいところである。