「あの…優斗?」


優斗は私の腕を掴んだまま、無言で歩く。


優斗は私の一番仲がいい男友達。


中学校から同じなんだ。


「優斗ってば!」


優斗は、我に返った感じでパッと手を離した。


「わ、悪い」


「もう、どうしたの? 急に」


「あいつに…なんか言われたのかよ」


あいつ…?


「あいつって、法師山先生?」


「ああ。何話してた? 口説かれてないだろーな?」


「はぁーー!? 何言ってんの、先生だよ!?」


先生が生徒を口説くことがあるかっての!


「ああ…そっか」


「どうしたの、急に」


いつもは私が誰と喋ろうと何も言わない優斗が、珍しい。


「ん? 何が?」


「いや、なんかいつもの優斗じゃなかったから…」


そう聞くと、優斗は下を向いて黙ってしまった。


「…別に」