「……あ、……」
「なんだよ?
言いたいことあんのか?
……あーでもここ、邪魔だから上行くぞ。
立てるか?」
自分に話しかけられている気がまるでせず、私はなされるがままに支えられて階段を上っていた。
「……お前、何してんだよ?」
階段を上りきってから、もう一度声をかけられた。
だけど、その声は怒っているようだけれども、優しさも込められている気がした。
「……すみません、迷惑かけちゃって……」
「お前さあ、大丈夫かよ」
大丈夫じゃない、と言おうとしたけれど、やっぱり言葉が出ない。
ひとまずお礼だけでも言おうとその人に向き直った。
「……」
ありがとうございます、と言わないといけないのは分かっている。
だけど、今度は驚きで声が出なかった。
なぜか、心臓をぎゅっと絞られる感覚で、不思議と嫌な感じはしない。
どうしてだろう。
「……あの、ありがとうございます。
もう、あんな危ないことはしません」


