いつからこうなってしまったのか覚えていない。
気が付いたら不安定な時、イラついた時、何も考えていない時、何となく、陶器の破片を突き立てていた。
なんで陶器の破片なんて持っているのか、そこだけは明確に覚えている。
他にも理由はあったのかもしれない。
でも、きっと違う気がしていた。
2年前、お母さんが怒って皿を床に落として割った破片を、気付かれないように自分の洋服に忍び込ませていた。
あの時の言葉は今でも覚えている。
「あたしの顔に泥を塗るくらいなら、何もするな!」
当時の私は深く傷ついた。
まだ心が感じられていた。
今は、もうその時のことを思い出しても「だから何?」と思うだけだ。
だけど、心がないことは好都合だった。
怒られても、不満げな目線を向けられても、部員に責め立てられても、悲しくなることは無いから。
悔しいとか、苦しいとかは分かる。
その代わり、嬉しいことを一切嬉しいと感じられなくなった。


